◆情熱のベタ・後編
ベタを飼い始めて一年。
私の周りには同じくベタのブリーディングに挑戦する友人達がいました。
時には気の合うお見合い相手を見つけるべく、お互いのベタを交換して繁殖に挑戦したりもしましたが、あの気の荒いメスは、お見合いさせるごとに相手のオスを突きまわし、時には殺しかけ(泣)、産卵にいたることも無いまま、一年近くが過ぎてしまいました。
その間にも他のメス達はどんどん産卵します。
・・・このまま、このメス行かず後家かー!?
そんなある日、両親が言いました。
「○○ホームセンター行くよ〜。ついでに魚も観よ〜」(←この時既に両親洗脳済みか?(笑))
ホームセンター系では滅多にお魚を購入しない私ですが、行けばやっぱりペット売り場に足を運んじゃうんですね。
その日も、両親と家庭消耗品を仕入れがてら、お魚を観に行きました。
ホームセンター・・・観賞魚売り場としては、微妙なところです。
なんせ、下手すると、係の店員さんがお魚のことを知らない。
一番凄かったのは、新人と思われる店員さんが、網ですくった小魚を手でつまんで袋の中に入れたことでしょうか・・・。(あまりのことにその場で口がきけなかったのですが、およそ5分で10尾が全滅(爆))
まあ、それは置いといて。
この日も凄いものを見てしまいました。
売り場についた私は、早速「ベタ」の商品カードがかかった水槽を見つけました。
普通、ベタのオスを水槽に入れて売る時には、それぞれが入った小袋のまま水槽に浮かべられていたり、透明な仕切りの中にそれぞれが入っていたり、または数が少なければ、複数の水槽に他の小魚とベタを1尾すつ混泳させていたり、です。
でないと、一箇所にこんな荒い性格のオス数尾を入れたら、たちまち大喧嘩勃発ですし。
が、その日、ホームセンターで私の目に飛び込んできたのは、45センチ水槽のど真ん中に無傷で、でん、と構えているちょっとオヤジなオスと、体中ボロボロになりながら、同じ水槽の端っこに小さくなっている幾尾もの他のオス達の姿でした。
・・・この真ん中のオスもしかして無敵なのかー?!
っていうか、一緒に入れるな店員! 店員ならやっちゃいけない常識の部類だー!!
しかし、その時の私の脳裏を、ある可能性が掠めました。
もしかして、このオスなら、「あのメス」に勝てるのでは?!
「この真ん中にいるオス下さい」(笑)
ベタを産卵させる時、メスがオスよりも少し弱いくらいの方が上手くいく様だと言われています。
メスが弱すぎるとオスに突き殺されてしまいますし、強いとうちの「あのメス」みたいになってしまいます。
そして、私がホームセンターから連れて帰ったオスは、期待通り、「あのメス」より強かったようです。
とうとう「あのメス」が産卵するに至りました。
しかも、今回はブリーディング用の水槽が上手く管理できたことと、餌の供給が上手くいったことで、60尾もの可愛い稚魚が育ちました。
両親の体色がどちらも青かったことも手伝って、皆んな私好みの真っ青なコ達です。
何故かこの時はメスの方が多かったため、メスは皆んなまとめて大きな水槽で養育し、オスはほとんどを人に譲って、お気に入りの数尾だけを手元に残しました。
ここで、思い通りの美しいベタを育てるために、私はあるトレーニングを開始することにしました。
本当にヒレの広がりが綺麗なベタを育てるブリーダーは、ベタの若魚に、あるトレーニングを施します。
実は、ベタのヒレが綺麗に広がるためには、日頃からその魚が他の個体に「威嚇してヒレを広げること」が必要なのです。
部屋に一尾だけをのほほんと飼っている個飼いでは、あの綺麗なお魚の本当の美しさを保てません。
プロのブリーダーの方が若魚を育てる時には、一尾一尾が入ったビンを沢山並べ、間に厚紙を挟みます。
その厚紙を一日20分だけ外します。
この時、隣り合ったオス同士が威嚇しあい、その結果ヒレは綺麗に広がります。
これを日々続けることで、ヒレが綺麗に広がったオスが育つわけです。
私もそれを見習い、自宅で生まれた若いオスの隣にお店から買ってきたオスのビンを並べてみました。
厚紙を取り、お互いが相手の姿を認めると、2尾とも途端に激しい威嚇を始めました。
あの両親の血を引いているせいか、若魚の威嚇は激しく、ビン越しにガンガン噛み付こうとしています。
今までその若魚が見せたことも無い程、尾ビレも大きく広げられています。
と、その時。
・・・一瞬のうちに、若魚の尾びれが上下に裂けていました。
もう、それは、「びりっ!!」って音が聞こえてきそうな程。
当然トレーニングは中止。張り切るにも程があります。
もっと小さいうちから始めるべきだったのでしょうか。やはり、ブリーダーの道は険しいと思いました。
その後、ショックを抱えて陽水苑に足を運んだ私に、なぐさめるようにおじちゃんは言いました。
「ダブルテールだと思えば、かっこいいよ〜」
でも、私ラウンドテールの方が好き。いや、そういう問題じゃ・・・(笑)
若魚の裂けたヒレは、数ヶ月かけてちょっぴり曲がった丸ではあるけれど、大きなラウンドテールになりました。
その後私も仲間達も忙しくなり、ベタのブリーディングからは遠ざかりましたが、今でもお店で売られているベタを見ると、あの血気さかんな若魚を思い出してなつかしくなります。
2001年 おさんぽ
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