
ここでは、三矢研で行なわれていた「ヤマトヌマエビ等の小卵型種の幼生」を飼育する方法をご紹介します。(小卵型と大卵型の違いは、こちら。ヤマトヌマエビ等小卵型淡水エビの生活史については、下関水産大学校水産無脊椎動物学研究室のHP「LAIZ」で読むことができます。トピックス内を御覧下さい。<淡水エビ類の保全のための基礎研究の一部は、長崎大学と下関水産大学校の共同研究です)
抱卵エビは、実験室で飼っていた個体が抱卵したものと、野外で採集してきたものの両方を使っています。 30リットル水槽で産卵した場合は、孵化寸前までそこで飼っておく場合と、すぐに1リットルビーカーや大きめのマヨネーズビンに移す場合があります。調子の悪い抱卵メスは、この移動後に脱卵してしまうこともありますが、そもそも調子の悪い親メスの卵は、孵化が一斉に起こらず、ゾエア幼生の発育もあまりよくないという傾向にあり、稚エビまで上手く育てるのはかなり厳しい作業になります。 いずれにしても、ゾエアの放出が始まる前までには、抱卵メスを1リットルビーカーや大きめのマヨビンに1尾ずつ移して、ゆるくエアレーションをかけておきます。脱卵が恐ければ、卵がはっきり発眼してから個別飼育に移行すれば、万一脱卵しても孵化はしますので安心です。個別飼育に移行したエビが落ち着かないようなら、少し水草を入れ、あまりストレスを与えない暗がり等に置くなどします。ゾエア孵化までは、ゴミ掃除と餌やりを30リットル水槽の時と同じようにします。
ゾエア幼生には、餌として研究室で培養した海産の植物プランクトンとクルマエビ用の配合餌料を与えます。ゾエア放出に先立ち、繁殖期が来る前に培養を開始しています。たまに海産植物プランクトンの調子が悪い時、冷蔵庫にストックしてある海産クロレラも使用しましすが、必要になるのはマレです。 海水は、濾過海水もしくは、人工海水を使用しています。 どちらの場合も、ポリタンクに用意しておきます。
ゾエア幼生は、孵化直後、すぐにでも塩水が必要なわけではありません。丸2日は淡水でも大丈夫です(種によって差があります)。そこで、ほとんどの卵が孵化してしまうまで、ちょっと待ちます。元気がいいゾエア幼生程一斉に孵化します。経験上、親メスの調子がよく、水温高め(約24度前後)の場合、朝放出に気付いたらその日の夕方、夕方に気がついたら次の日には、次の行程に入ります。
大きめのバットにビンの中身をあけ、ゾエア幼生の入った飼育水から親エビを取り出します。まだ腹肢に卵が残っている場合は、新しいマヨビン(またはビーカー)に今までと同じように親エビを移して、引き続きソエアが放出されるのを待ちます。調子がよければ、もう放出は終わっていますが、温度が低かったり、親の調子が悪かったりすると、延々ゾエアが放出されたり、放出が終わらないうちに親エビが脱皮してしまったりします。
ゾエア幼生は飼育水(なるべくゴミは入れない)ごと新しいビンに入れ、半海水くらいになるように、海水を足します(目分量でもOK)。 ヤマトヌマエビには70%海水くらいが一番いいような感じですが、50%海水でも十分いけます。植物プランクトンをピペットで取り、海水ごと投入します。(プランクトンの密度によって、与える量が変わります)
ゆるくエアレーションをしておきます。エアレーションがゆるすぎたり、強すぎたりすると、元気の無いゾエア(特に脱皮前等)は、水面の表面張力につかまって水中に沈めなくなったり、水底に溜まるふわふわしたゴミにまかれて動けなくなったりします。(最悪の場合、餌もとれず、脱皮も出来ず、死に至ります) 特に調子の悪いゾエアが多いタンクでは、ゾエアの遊泳力が弱く、これらの現象が発生しやすくなります。
知人のとんばさんから頂いた顕微鏡画像です。
毎日ゴミ取りと発達段階のチェック(実験室ですので・・・)、餌やりをします。
エアレーションを外し、大きめのシャーレにチューブで底に溜まったゴミを吸い出します。当然ゾエア幼生も吸い込んでしまうので、ここから鬼の作業が待っています。
まずトレース台等の上にシャーレを置き、肉眼で(もしくはルーペで)ゾエア幼生を探し、ピペットで取り上げます。この時、この個体を顕微鏡で観察し、形態や色素胞をチェックして、もとの飼育ビンに戻します。元気な個体はよく動くので目につきますが、それでもゾエア幼生はとても小さいので見落としてしまいます。また、脱皮前だったり、餌を上手く食べられない個体は元気が無く、あまり動かないのでゴミの中にいると全然見つけられません。そこで、シャーレの中身を隅から隅まで顕微鏡の下で観察し、ゾエア幼生を一匹のこらずピペットで拾い上げます。慣れれば、この顕微鏡作業を2〜3回で、全てのゾエアを拾い上げられます(爆)
全部の幼生を拾い上げたら、植物プランクトンとクルマエビ用餌を与えます。植物プランクトンについては前述のとおりです。クルマエビ用の餌はすり鉢で細かくすりつぶし、小さいメッシュで濾してから、落ちた中の大きめの粒子だけを水流等で集めて適宜与えます。細かい粒子を与えないのは、水の汚れを出来るだけ抑えるためと、ゾエアがふわふわしたゴミにまかれて動けなくなるのを出来るだけ防止するためです。
水温にもよりますが、ゾエアが稚エビになるまで約1ヶ月〜1ヶ月半かかります。 ゾエアも後期に入ると随分大きくなり、はじめ水面付近に集まっていたのが、だんだん水底にも下がるようになります。時々底に触っているようですが、まだ歩くことはできません。 稚エビに変態して、初めて歩く事ができるようになります(それまでの浮遊生活(浮遊幼生期)から底生生活(幼稚体〜成体)に入るので「着底」と言います)。稚エビは漂っているゾエア幼生とは大きさこそあまり変わりませんが、動きは全く違うので注意してみていれば、すぐに探し出せます。その時その時で随分様子は違うのですが、調子がよければ皆んなが一斉に(1日〜2日のズレくらいで)脱皮、変態を繰り返していくので、稚エビになるのも比較的一斉に起こりますが、個体によって発達スピードに差がある場合は、最初の個体が稚エビになってから、最後の個体が稚エビになるまでは、約半月もずれてしまう場合があります。 稚エビになったからといって、すぐに淡水にする必要はありません。毎日徐々に塩分濃度を薄めていっています。
ランダムに拾い上げた数十尾を50ccビーカー等で1尾ずつ個飼いをしています。 毎日、または1日置きにゾエア幼生をチェックした後、新しい飼育水が入った別のビーカーに、そのまま引越しさせています。(全換水)
2004年8月 2006年1月一部追記 おさんぽ